住宅関連新聞記事ダイジェスト No.370 2011/2/3~2011/2/9
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住宅関連新聞記事ダイジェスト No.370 2011/2/3~2011/2/9 Vol.1
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【日本経済新聞】
1 都内の住宅着工2年ぶり増。10年10%増、都心3区が2倍
2 無人と化した地に長期優良住宅が残る未来
3 不動産投資ビジネスの明日(6)周辺産業への影響
4 不動産投資ビジネスの明日(5)国富の価値向上策
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1 都内の住宅着工2年ぶり増。10年10%増、都心3区が2倍 2011/2/7 日本経済新聞
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東京都が4日発表した2010年の都内の新設住宅着工戸数は約11万9800戸で、前年に比べて10%増えた。増加は2年ぶり。都心部を中心に開発が目立つ分譲マンションの着工増が全体をけん引した。低金利に加え、税制優遇など国の住宅取得支援策が個人の購入意欲を後押ししたとみられる。
地域別では千代田、中央、港の「都心3区」が前年の約2倍の約6900戸。都心3区の住宅需要は長く低落傾向が続いていたが、03年以来7年ぶりに前年実績を上回った。23区全体も、前年比13%増の約9万700戸と堅調ぶりを示した。
着工戸数の内訳を見ると、自宅などの持ち家は前年比11%増の約2万100戸で3年連続の増加。分譲住宅は全体が同39%増の約4万9900戸で、中でも分譲マンション(約3万2000戸)が同44%増と大幅な伸びを見せた。
分譲マンションの急増について、みずほ証券の石沢卓志チーフ不動産アナリストは「大手デベロッパーを含め低廉な物件が出始め、値ごろ感から需要が高まった」と背景を分析する。貸家は前年に比べ5%減の約4万8900戸だった。
ただ、今後の見通しに関し石沢氏は「住宅供給でめざましい回復は考えにくい」とみる。消費者の所得が伸び悩んでいるほか、分譲マンション市場で値上がりの動きが見え始めたためだとしている。
10年12月の都内新設住宅着工戸数は1万515戸。前年同月比24%増で、7カ月連続して増加した。
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2 無人と化した地に長期優良住宅が残る未来 2011/2/8 日本経済新聞系
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人口減少2050年国土交通省長期優良住宅国土審議会政策部会長期展望委員会。これは恐ろしい未来だと感じた。昨年末に国土交通省の国土計画局が公開した2050年の日本の国土についての予測データである。
「国土の長期展望に向けた検討の方向性について」と題された資料は、2050年には日本の国土の6割以上の地点で現在の半分以下に人口が減少し、21.6%は無居住化、つまり人が住んでいない状態になると予測する。
日本の総人口は2004年をピークに今後100年間で100年前(明治時代後半)の水準に戻っていく。2050年の人口は9515万人、2005年から約3300万人、25.5%の人口減になるという。
資料は、全国的な人口減少率を超えるペースで人口の減る地域が増えることを「地図」で示す。全国を「1km2ごと」に色分けした地図では、人口増を示す「赤色」の部分は東京圏と名古屋圏を中心にほんのわずか。大部分が人口減を示す寒色系に塗られている。
人口が半分以下になる地点は現在の居住地域の6割以上を占め、居住地域の21.6%が「無居住化」を示す色に塗り分けられている。都市圏レベルでみても、多くの圏域で人口が大きく減少し、都市の約2割は人口が半分以下になる。
2050年はわずか40年後だ。2011年に産声を上げた新生児はその頃、住宅を取得する適齢期に差し掛かる。一方で2011年に新築された長期優良住宅は築40年弱。まだまだ現役で十分に活躍できる築年数、のはずである。
日本の居住地の近未来と長寿命住宅を重ね合わせると、子供たちが去り、無人と化した地に建つ住宅の姿が浮かんでしまう。
何を建てるかではなく、どこに建てるか。さらに言えば建てた地域をいかに維持していくか──こんな命題が住宅の実務者にとってじわじわと、確実に重みを増していく。
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3 不動産投資ビジネスの明日(6)周辺産業への影響 2011/2/8 日本経済新聞系
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──世界的な構造変化のなかで、企業経営のかじ取りは難しくなる一方です。不動産会社や建設会社の経営者には、どんな姿勢が必要ですか。
田辺 大手デベロッパーの歴史をたどると、経営環境の変化に柔軟に対応できたかどうかが勝負を決めています。
日本の一等地を拠点とする三菱地所だって、バブル崩壊後は苦しみました。1997年に「丸の内のたそがれ」という記事が日本経済新聞に載りました。このままでは丸の内地区の地盤沈下が避けられないとの内容です。それでも建て替えを計画的に進め、いまは軌道に乗っているばかりか、新しい街づくりのあり方を創造しようとしています。
一方、都心部に土地を持っていなかった三井不動産に、三菱地所と同じ生き方はできませんでした。日本で初めて「デベロッパー」を名乗って宅地開発に乗り出すとともに、都心部でも土地を買い集めて霞が関ビルのような日本初の超高層ビルを開発し、徐々に賃貸ビル事業でも存在感を増していきました。その後「預かり資産」という言葉を使って、投資家の資金を運用するビジネスを始めました。当初はフィービジネスを念頭に置きつつ、次第に自らファンドをつくって、ある程度のリスクを取りながら不動産を運営するビジネスに発展させ、今のような地位を築いています。
今は安定しているといわれる三菱地所や三井不動産にしても、大きな決断をしながら時代の変化に柔軟に対応してきたのです。建設会社など、不動産の周辺産業にも同じことが言えるでしょう。
──再び不動産取引が活発になるとしたら、周辺産業への影響としてどんなことが考えられますか。
田辺 不動産が動くときは、周辺産業にとっても大きなビジネスチャンスです。所有者が変わると、新たな方針に従って取引先が変わります。建設や改修の工事が始まることが多い。そうした機会を逃さないためには、やはり不動産市場の動向とデベロッパーの戦略に注意を払う必要があります。
不動産証券化の仕組みを細かく知る必要はありませんが、発注者が何を目的に動いているのか、知る必要はあるでしょう。私が不動産会社にいたときには、やはり自分たちの要望に的確に応えてくれそうな会社に仕事を頼みました。
昔は系列で仕事が決まりました。今も系列は大事ですが、不動産証券化が定着するなかで、中立的な発注に移行するところが増えました。なぜかというと投資家がいるからです。最適な運営をしなければ、自分たちが投資家から切られてしまいます。
──今後、ゼネコンに求められる能力を一つ挙げてください。
田辺 プロジェクトの資金調達力だと思います。アジアをはじめとして新興国には、インフラ整備や都市開発の需要があるわけです。その分野のノウハウを備えた銀行や証券会社と組んで、投資家のお金を引っ張ってくれば、ファンドをつくることができるのではないでしょうか。ゼネコンには信用力がありますから、それができると思います。
(連載終了)
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4 不動産投資ビジネスの明日(5)国富の価値向上策 2011/2/7 日本経済新聞系
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──海外の投資家は、日本の不動産マーケットをどう見ていますか。
田辺 日本は、米国に次いで2番目の市場規模があり、東京はニューヨークに匹敵するくらいの都市力を有しています。地震はあるが、法的、経済的には問題が少ない。円高の問題があるものの為替は安定している。海外の投資家から見れば、分散投資の一環として、やはり外せない国です。長期的に見れば人口減の問題がありますが、「日本への投資をやめよう」という話にはなっていません。
問題は日本について知られていないことでしょう。英語による発信力が圧倒的に不足しています。わからないことで海外の投資家はおっかなびっくりのスタンスになり、その分、リスクプレミアムがついてしまいます。英語圏と同じように開かれているとは言い難い状況です。
──現在の日本の不動産価格を、どう思いますか。景気をよくするために、不動産価格はある程度、回復することが望ましいという話があります。
田辺 不動産の本来の実力よりも低いと見ています。2003年から07年にかけての価格の上がり方は、それほど異常ではありませんでした。どこが適正価格かは難しいところですが、日本の経済力を示すGDP(国内総生産)と土地価格を約10年前(2000年)と今とで比較すると、GDPは500兆円弱とほとんど変わっていないのに、土地の資産価値は約1500兆円から約1000兆円へと3分の2まで減少しています。
2000年の土地価格は、バブル崩壊を経て、「土地神話」による高値が調整された後のものですので、日本の経済力に変化がないのにそれから10年で更に大きく土地価格が下がるのは、やはり下がり過ぎと言えるのではないでしょうか。ちなみに同時期において、米国の不動産価格はGDPとほぼ同じペースで上昇し、約1.5倍になっています。
統計によると、日本には2008年時点で株式と出資金が約420兆円、不動産(土地以外の建物等を含む)が約2300兆円あります。株式ももちろん大事ですが、規模の大きな不動産の価値を国富としてきちんと評価することが重要です。不動産の価値を高めることが国の経済力アップにつながります。
市場関係者にできること
──不動産価値向上のために、市場関係者としてできることがありますか。
田辺 不動産の価格は、不動産のキャッシュフローを期待利回りで割って算出します。単純に考えれば、分子のキャッシュフローを増やせば価格が上がります。ただしキャッシュフローの成長はGDPに連動するので、日本経済の成長が前提です。市場関係者だけではどうすることもできません。
では、GDPが上がらなければ日本の不動産の価値は上がらないかといったら、そんなこともない。分母の利回りを下げることが考えられます。
国債の利回りは金融市場の問題なので、不動産側でどうにかできる問題ではありません。動かせるのはどれかというと、不動産全体のリスクプレミアムと個別不動産のリスクプレミアムです。
日本の現状を読み解けば、第1にキャッシュフローの期待成長率が「日本はダメなんじゃないか」ということで上がらない。第2に、不動産全体のリスクプレミアムが高止まりしている。この不動産全体のリスクプレミアムには、開発リスクや地震リスク、キャッシュフローや価格の変動リスク、クレジットリスクなどが含まれます。例えば開発リスクは、行政の協力を得ることで抑えることができる。ただ、もっと大きいのはキャッシュフローの変動リスクやクレジットリスクです。
金融工学では、価格の変動が激しくて大きいほどリスクが高いとみなします。その分、高いプレミアムを要求される。日本の不動産も過度に価格の上下を繰り返せば、リスクが高いと評価され、計算上、リスクプレミアムを上乗せされてしまいます。金融工学の理論が正しいとは限りませんが、株式投資でも債券投資でも、現実に世界の投資家は、この理論に基づいて行動しています。
では、不動産価格の過度の変動を抑えるためにはどうしたらよいか。例えば、銀行が急に貸し出しを絞ることのないように、当局が銀行を指導することはできます。これは政策対応です。今回の金融危機対応で、日銀がJ‐REITの投資口を購入対象に加えたのもその一つです。マスコミにも責任があります。根拠もないのに不動産価格の行き過ぎをあおらないことです。
市場の実務者の心構えとしては、必要以上に利益を求めるのではなくて、合理的な利益を求めるということです。そうすればリスクプレミアムは小さくなって、不動産価値の向上につながります。先ほどお話しした株主(投資家)至上主義の反省も、ここに関係してきます。
──心構えが影響力を持つのでしょうか。
田辺 バカにはできません。この期待利回りが少し動くだけで、不動産の価値は大きく上昇します。
仮に日本の不動産のキャッシュフローが100兆円あるとします。このなかには既に実際に生み出されているキャッシュフローもあれば、不動産を有効活用すれば生み出すことが期待できるキャッシュフローも含まれます。なかにはリスクの大きな不動産も混じっているので、仮に全体の期待利回りを10%としてみましょう。日本の企業と国・地方公共団体が所有する不動産は1000兆円弱あるので、あながちいい加減な数字であるとは言えません。この期待利回りが0.5ポイント下がったら約50兆円の違いです。
取り組み前の価値 100兆円÷10%=1000兆円
取り組み後の価値 100兆円÷9.5%=1053兆円
日本のGDPが約480兆円とすると、1割超を占めます。キャッシュフローの期待成長率を上げるという国の命題と、不動産のリスクプレミアムを下げるという市場関係者の取り組みを合わせて進めると、ベースの不動産価格が上がり、資産効果を通じて消費と景気に好影響を与えます。結果的に、海外の投資家から日本に流入するお金も増えてきます。
金融市場もそうですが、日本の不動産市場は、海外の投資家などにあおられていたところがありました。これによってボラティリティー(変動性)を高くして、市場を痛めつけていた。それをどうしていくかという問題です。日本の不動産の実力を、海外の投資家にもきちんと理解してもらうことが求められています。
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住宅関連新聞記事ダイジェスト No.370 2011/2/3~2011/2/9 Vol.2
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【日本経済新聞】
5 不動産投資ビジネスの明日(4)ルールが変わる
6 不動産投資ビジネスの明日(3)真の投資家重視とは何か
【朝日新聞】
7 未来型省エネ住宅「スマートハウス」で居住実験
【読売新聞】
8 エコな駅、JR東が導入…屋上緑化や太陽光発電
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5 不動産投資ビジネスの明日(4)ルールが変わる 2011/2/4 日本経済新聞系
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──不動産投資ビジネスの実務者にとって、この先、重要性が増すのはどんな視点でしょうか。
田辺 既に言われていることですが、今後もますます重要になる視点として、グローバル化、金融と不動産の融合、そしてコンプライアンスがあります。
グローバル化は、資金調達と投資の両面について言えることです。これからは市場間の競争になります。ケネディクスがやったように、オーストラリアの市場に上場して資金調達したって構わないわけです。投資先も日本に限らない。そういう意味で、市場間競争におけるグローバル化がいよいよ本格化します。クロスボーダー投資が増えてきます。
そして、不動産市場は金融の影響をますます強く受けるようになるでしょう。今回のように金融危機が起きてみると、不動産の環境が大きく変わってしまいます。今後も同じようなことが起きるかもしれない。不動産市場の先を知るには、金融のことを知らなければなりません。
株価が下がれば、BIS(国際決済銀行)規制によって銀行の融資スタンスが変わります。機関投資家が株や債券、不動産などに分散投資する場合、それぞれに一定の比率を設けています。株価が落ちれば、比率に従って不動産投資も減らす。デノミーネーター・エフェクトです。株価は本来、不動産と関係ないはずなのに、連動するようになりました。
コンプライアンスの概念は単なる法令順守から、さらに広がると思います。投資家など特定の人に誘導されるのではなくて、市場の規律を意識して行動することが求められるでしょう。
このほかにも重要になることが四つあると考えています。会計、社会資本、環境、それにリスクマネジメントです。
会計では、IFRS(国際会計基準)が不動産投資に及ぼす影響に注目する必要があります。2012年に適用について最終判断が出る予定です。どこまでの範囲で適用されるかわかりませんが、その方向で動いていることは間違いありません。
IFRSを適用すると、不動産の評価が企業の収益(包括利益)に直接的に結びつくようになります。企業は、より安定的な不動産運用を求められる。そうなるとリスクの高い不動産、収益のぶれそうな不動産に対する投資がしにくくなる。企業はおかしなリスクは取れませんから、不動産売却を促すことにもつながってくるでしょう。
──社会資本と不動産とのかかわりは?
田辺 社会資本を新しく整備するとしても維持更新するとしても、国や自治体のお金は明らかに足りません。新たな資金を入れていくことを、当然、考えていかなければなりません。そのときにベースとなるのが、不動産証券化のような資金調達手法です。政府の成長戦略にも、民間資金を活用した社会資本整備が盛り込まれました。
そうした流れのなかで、不動産が都市を構成する社会資本の一部だという考え方が強くなってくるでしょう。投資家は成長力のある都市に投資しますから、国際競争を意識した都市戦略が重要性を増してきます。
企業にとって不動産戦略を考えることは、経営戦略を考えることとイコールです。不動産は資産として金額が大きいですし、買うにしても借りるにしても、事業に必ず使います。不動産だけ取り出して考えること自体が、時代にそぐわなくなってきている。国や自治体も同様です。施設やインフラのことを考えるということは、国や自治体の経営戦略を考えることなのです。
常に米国優位だったが・・・
──環境性能を高くしても、不動産の収益向上につながらないという意見があります。
田辺 環境対策は世界的な地球温暖化対策防止の取り組みのなかで当然、やっていかなければいけないことですし、大きな流れとしては環境性能によって個々の不動産を評価することになるでしょう。
ただし、ビル事業者などが、どの程度までコストをかけて取り組めばいいのかの判断は難しい。環境に熱心に取り組んだことによる見返りがあるかというと、現時点ではなんとも言えません。例えば土壌汚染なら、取り除けばその物件の投資価値が上がるかもしれない。しかしCO2を削減しても、物件の価値が上がるかどうかはっきりわからない。
環境対策はまず国策として推進し、やらない人が得をすることのないようにすべき問題だと思います。それでも、海外も含めて投資家やテナントの動向を観察して、乗り遅れないようにしなければならないでしょう。
──リスクマネジメントの対象は広いです。具体的には、どんなリスクを想定すればよいのですか。
田辺 これまでのサイクルで得た教訓を生かすということです。先ほどお話しした、流動性確保やコミットメントラインもその一つです。もう一つ重要なことは、時代のうねりを読むことです。世界的に構造的な変革が起きていることは誰もが認めています。そういう意味では、過去の分析をいくらやっても、あまり意味をもたないのかもしれません。
2001年に出版した「不動産投資のイノベーション」(ダイヤモンド社)のなかで書いたことを10年たって振り返ってみると、7~8割は予測通りになりました。でも、この10年間の不動産投資は、米国がやってきたことをベースにしているので、当たって当然かもしれません。ところがこの先はモデルがありません。グローバルな市場のなかで、どこに投資をすればいいのか、どこから資金調達するのがいいのかといったことさえわかりにくくなっています。
ビジネスの枠組みも変化しています。従来はあらゆることが欧米主導で起きました。ゲームはルールをつくる国が強いので、常に米国が優位でした。これからは経済力を有するアジアの勢力が表に出てくるでしょう。既に中国は無視できない。だから、米国だけ見ていればよいというわけにはいきません。例えば国際的な不動産鑑定のルールが変わり、日本にとって不利になるかもしれない。場合によっては、日本の不動産が買いたたかれる恐れだってあるわけです。
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6 不動産投資ビジネスの明日(3)真の投資家重視とは何か 2011/2/3 日本経済新聞系
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田辺信之・宮城大学事業構想学部教授
──不動産の市況が上下する過程で、考え方が変化したことはほかにもありますか。
田辺 不動産ファンド運用会社とスポンサー企業との関係も、その一つです。市況の回復局面では、ファンド運用会社はスポンサー企業と安易にくっつかない方がよいと言われていました。スポンサーのリストラの出口として高値で不動産を買うこと、つまり利益相反を疑われるからです。ところが不動産の価格が上昇して、なかなか買えなくなると、「スポンサーと連携することが重要である」というように、市場の認識が変化しました。
REIT(不動産投資信託)の増資にまつわる話もあります。REITの成長期においては、「REITの増資は物件取得と同時でなければダメだ」というのが通説でした。なぜなら、増資だけ先にすると株数が増えて1株あたりの分配金が減ってしまうから。いわゆるダイリューション(希薄化)です。「そういうことをすると投資家が離れる」という説明でした。
実際にファンド運用会社は、できるだけその方針で取り組もうとしました。しかし、これも永久に続けるのは難しい面があります。お金を調達しやすいタイミングと、物件を買いやすいタイミングがイコールだとは限りません。同時に取得するとしても、分配金を減らさないことが前提なら、高い利回りで物件を買い続けなければならない。あるいは、借入れ比率を高めて、レバレッジ効果によって分配金の利回りを高めなければならない。
増資によって一時的に配当が落ちるとしても、中長期的には安定的な運用につながることを説明できればいいはずですが、現実にはそのリスクを取らない、あるいは取りにくい方向に市場が向かってしまいました。各プレーヤーが、市場からの評価を少しでも上げたいと思う面があったと言わざるを得ないでしょう。
──ここにも無理があったと。
田辺 もう一つ、流動性確保の必要性も学びました。流動性とは、不動産ファンド運用会社にとっての余剰資金のことです。運用会社が、いつでも物件を買えるように100億円もっておきたいと言っても、投資家から反論を受ける場合がありました。「余分なお金があるなら返済せよ」とか「さっさと運用せよ」とか言ってくるわけです。従来はそれを無駄なコストと捉えていたのですが、今になってみると、リスクヘッジのために重要なコストであることがわかります。
コミットメントラインと呼ぶ、企業と銀行との協議で、期間を決めて融資枠の上限をあらかじめ定めておく制度があります。枠内でなら審査なしで銀行から資金提供を受けられるのですが、枠を取っておくだけでフィーがかかります。一部の投資家からは、それさえ無駄だという指摘もありました。でも、やはり必要な費用だったわけです。
不動産市況が上昇から下降に転じたこの10年間のサイクルのなかで、こうしたリスクマネジメントの意味を学んだのです。
中長期的な判断軸と多くの投資家の観点
──いろいろな問題を突き詰めると、何が真の投資家重視なのかという論点に行き着くということですね。しかし、人間は利益を追求する動物です。企業も従業員にそれを求めます。
田辺 私も不動産の実務をしていたので、反省を含めて考えているのですが、現実問題としてどこで歯止めをかけたらよいのか、なかなか明確にはしにくいところです。投資家が実際に要求したのではなく、ファンド運用会社や証券会社などが、必要以上に投資家の意向をおもんばかった面もあるように思います。
ただ、1990年前後に起きたバブル崩壊時の経験者が経営陣にいる大手や中堅の不動産会社は、今回の局面でも比較的、慎重でした。不良債権処理で苦しんだ金融機関出身者がいる不動産ファンド運用会社でも、ある程度の規律が働いたと思います。
でも、そうではないところでは、普通ならば考えられないような借り方をする事例も散見されました。もちろん不動産の運用をやっている人の責任ですが、背景には市場からの無言の圧力を感じていた面もあるように感じます。
投資家にもいろいろな人がいます。しっかりした見識に基づいて、中長期的観点に立って意見をいう投資家がいる一方、ともかく目先の利益が大事だという投資家もいます。「スポンサーから積極的に物件を買って外部成長するべきだ」とか「レバレッジを効かせてもっと利回りを高めたらどうか」とか。海外の投資家説明会に行くと分かりますが、ときには必ずしも日本の事情に精通していないMBA(経営学修士)を取得した投資家が出てきて、莫大(ばくだい)な資金をバックに厳しい意見を言ってくる場合もあります。
短期で売り逃げようという人もいれば、不可能だと分かりながら言う人もいる。ファンド運用会社のなかには、投資家の意見を真に受けて実行した人もいれば、ある程度までは聞き流した人もいたと思います。ここで重要なことは、短期的な視点もさることながら、中長期的に見て、また、多くの投資家の観点を持ちながら、何が真の投資家重視につながるかという判断軸を、市場関係者がしっかりと持つことでしょう。一見、短期的には投資家重視のように見えても、必要以上にリスクを取り、その後の収益が大きく落ち込むようでは、最終的に投資家にとってプラスにならないかもしれません。
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7 未来型省エネ住宅「スマートハウス」で居住実験 2011/2/6 朝日新聞
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住宅大手が、太陽光発電や燃料電池などを使った「未来型」の省エネ住宅の開発を加速させている。二酸化炭素(CO2)排出削減をめざし、制御システムを家に構築して賢く効率的に電気を使おうという発想で、「スマートハウス」と呼ばれる。各社とも続々と実証実験に乗り出しており、快適さと便利さを実感できるかが普及のカギを握りそうだ。
積水ハウスと大阪ガスは1日、奈良県王寺町の住宅地の一角につくった「スマートエネルギーハウス」の実験住宅を公開した。太陽電池、リチウムイオン蓄電池と、大阪ガスが開発中の高効率の燃料電池の「3電池」が備わっているのが特徴。ITを駆使した制御システムでこれらをつなぎ、高いレベルの省エネを目指すものだ。
燃料電池は都市ガスから取り出した水素と酸素の化学反応で電気や熱を発生させる。電力消費の少ない夜間にもこれを作動させて蓄電池にため、太陽電池の出力を含めても不足する夕方や夜に放電するなどの制御を行う。住人にはタブレット型端末を通じて発電状況を知らせ、「熱に余裕があるので空調を床暖房に」といった助言もする。
実際に大ガスの社員(29)と家族2人が5日から3年住んで検証する。実験の目標は、備え付けの電気自動車での電力消費も含めて「CO2の排出を計算上ゼロにする」ことを目指す。太陽光発電で電力購入を減らすことで削減したCO2量を、住宅での電気・ガス消費で発生するCO2量を上回らせて差し引きゼロにしたいという。
大和ハウス工業も、リチウムイオン蓄電池を使った省エネ住宅を大阪府吹田市の住宅展示場で一般公開している。太陽光発電に加えて太陽熱利用システムを屋根に搭載、水道水を利用したドライミストなども窓の外側に設置し、家中丸ごと「エコ」な住宅を具体化した。
CO2は4人家族の一般住宅(延べ床面積136平方メートル)に比べて71%減。年間光熱費は105%削減でき、タダにしたうえで売電にまわせる計算という。販売価格は一般住宅に比べて250万円程度高くなる見通しだが、年内に販売する予定だ。
このほか、パナホームやマンション大手の大京なども実証実験を進めている。
大手各社が省エネ住宅に力を入れる背景には、人口減で新築需要の市場縮小が見込まれるなか、住宅の環境配慮が消費者の購買意欲をくすぐるとみているからだ。CO2や消費電力量の削減に加え、家電製品の自動化や自然の光や風をうまく住宅に取り入れ、利便性と快適性をともに追求している。
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8 エコな駅、JR東が導入…屋上緑化や太陽光発電 2011/2/9 読売新聞
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JR東日本は8日、屋上緑化など環境に優しい技術を駅に導入する「エコステ」を始め、第1弾のモデル駅として中央線四ツ谷駅(東京都新宿区)を、近く改修すると発表した。
管内の12支社で1か所ずつモデル駅を指定し、整備を進めていく。
同駅では、ホームの屋根の上を緑化するほか、駅舎の屋上に公園を造って一般に開放する。照明などを消費電力の少ないLEDに切り替え、太陽光発電も導入。二酸化炭素の排出量を、約4割削減する計画となっている。総事業費は約10億円で、2011年度中の完成を目指す。
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住宅関連新聞記事ダイジェスト No.370 2011/2/3~2011/2/9 Vol.3
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【読売新聞】
9 「光量」で選ぶLED電球
10 簡裁はエレベーター設置を…建築確認出しません
11 空き家 大雪で高まる倒壊の危険性
12 幕張新都心・文教地区、長谷工が落札
13 戸別の太陽発電を導入したマンション
14 「奇想天外な家」脚光
15 「改葬」手順しっかりと
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9 「光量」で選ぶLED電球 2011/2/8 読売新聞
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明るさ「ルーメン値」が決め手
LED(発光ダイオード)の電球が普及し始めた。省エネ・長寿命が“売り”だが、白熱電球から買い替えたものの、「思ったより暗い」と不満に思う人も多いようだ。
こんなことにならないよう、LED電球の正しい選び方を紹介しよう。
結論から言うと、LED電球は「ルーメン(lm)」という数値で、明るさを判断して選ぼう。
耳慣れない言葉だが、ルーメンとは「全光束」という明るさを測る基準の単位で、電球から全方向に発せられる「光の量」を表している。最近の商品では「485lm」などと、ルーメンの値をパッケージに大きく表示するものが増えてきた。
LED電球の明るさ表示をめぐっては、最近まで統一した基準がなく、これが「白熱電球より暗い」という不満の一因にもなっていた。
例えば「60ワット電球相当の明るさ」という表示だ。メーカーによっては、LED電球の「真下の明るさ」が60ワットの白熱電球と同等の場合に、こう表示することがある。ところが、明るいのは真下だけで、白熱電球と比べると「光の量」が大幅に足りない商品も販売されている。
こうした混乱を解消しようと、業界団体の日本電球工業会が昨年7月、LED電球の明るさ表示のガイドラインを定めた。そこで、商品選びの新たな基準として採用されたのが「光の量」を示す全光束、すなわちルーメンだ。
右上に掲げた同工業会が示した白熱電球の指標「ワット(W)」と、ルーメンの換算表を参考にしてほしい。60ワットの白熱電球から取り換えるなら、810ルーメン以上のLED電球を選べば、同等の明るさが得られる。
同工業会に加盟していない海外メーカーなどの商品には、「60ワット相当の明るさ」と表示しながら、400ルーメン程度しかないものもある。買ってから後悔しないよう、店頭できちんとルーメンをチェックしよう。(経済部 滝沢聡)
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10 簡裁はエレベーター設置を…建築確認出しません 2011/2/8 読売新聞
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東京都八王子市は7日、八王子簡易裁判所を建て替えるため国が出した建築確認申請について、高齢者や身体障害者が利用できるエレベーターがないことを理由に、計画を変更しない限り申請を認めない方針を決めた。
黒須隆一市長が同日の記者会見で表明した。
計画されている建物は2階建て。国は「エレベーターがなくても、バリアフリー新法や都条例に違反しない」との見解だが、ユニバーサルデザイン(だれでも利用しやすい設計)を推進する市は「国の建物は自治体や民間の手本になるので影響は大きい」と、後に引かない構えだ。
国土交通省建築指導課によると、バリアフリー新法は2階建て建築物にエレベーターの設置義務を課していないが、地方自治体による上乗せ規制を認めており、都条例では2階建てでも対象になる。ただ、「不特定多数が利用する」などの条件があるが、担当の最高裁経理局は「不特定多数の人は利用しない。車イスの人が来ても、1階部分で対応できる。法的な問題はない」としている。
同局によると、全国の裁判所の建物のうち、2階建てでエレベーターを設置しているのは、東京都町田市にある町田簡裁(1996年築)のみという。
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11 空き家 大雪で高まる倒壊の危険性 2011/2/8 読売新聞
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記者が同行 青森市が実態調査
降り積もった大雪で空き家倒壊の恐れが高まっているとして、青森市は7日、その実態調査に乗り出した。消防本部と手分けしてパトロールし、建物の倒壊や落雪の危険性を調べる。緊急措置が必要な場所については消防が除雪を行うが、所有者や空き家の数が不明で課題も残る。初日の調査に同行し、現場を見て回った。(野口季瑛)
青森市役所を出発したのは7日午後1時半。危機管理室の職員2人がパトロールに向かった先は、同市幸畑の平屋建ての空き家だった。ここ数日、気温が上昇したためか、屋根に積もった雪が滑ってせり出し、1メートルほどしか離れていない隣家に迫っていた。
次に直行したのは、自動車で5分ほどの同じく幸畑地区にある木造2階建ての空き家。近所の住民によると、数十年間、誰も使っていないとみられ、屋根の一部が抜け落ちていた。隣家の金崎京子さん(56)は今月1日、青森市内で雪で空き家が半壊したことを知った。「パトロールしてくれるのはありがたい。お隣のことなので、私たちではどうすることもできないから」とホッとした様子で話した。
市職員は、現場を見て回りながら、除雪の必要性や落雪の影響などのチェック項目について、携行したリストに記入。この日巡回した6軒の空き家については「緊急性なし」と判断し、除雪までは至らなかった。
今回の実態調査は10日までに、所有者と連絡が取れない空き家56戸を回る予定だ。青森市の福士耕司総務部長は、「市が対応するのは、あくまで危険を防ぐための緊急避難措置。税金を使うことにもなり、所有者の責任で除排雪するのが原則」と強調する。
調査の対象は2002年度以降、付近住民などから市に寄せられた空き家の情報を基にしている。しかし、市危機管理室は「ほかにも危険な空き家があるはずだが、所有者の届けがなく住民からの通報もなければ、十分な実態把握は難しい」としている。
家屋に積もった雪を放置したまま、これから気温が上がると、倒壊の危険性は高まるという。
防災科学技術研究所雪氷防災研究センター(新潟県長岡市)の石坂雅昭・センター長(60)によると、雪の重さは降雪時で1立方メートル100キロ。暖かくなると雪中に水分を含んでザラメ雪になり、3~4倍の重さになる。「雪が減っても決して安心できない」と注意を呼びかける。
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12 幕張新都心・文教地区、長谷工が落札 2011/2/8 読売新聞
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幕張新都心の「文教地区」にある国際能力開発支援センター(千葉市美浜区で) 大学や教育研究施設などが多く立地している千葉市の幕張新都心文教地区で、売却が進められていた独立行政法人雇用・能力開発機構の研修施設の土地(約2・3ヘクタール)と建物を、マンション分譲大手「長谷工コーポレーション」(東京)が落札したことが7日、わかった。
市は、マンション建設は文教地区の街づくりにふさわしくないとして、新たに条例を設けてマンション建設を規制する方針を打ち出していたが、条例の制定前にマンションが着工されれば、規制が空振りに終わることも予想される。
市が同日、市都市計画審議会(榛沢芳雄会長)で明らかにした。市によると、1月21日、機構が実施した一般競争入札で「国際能力開発支援センター」(千葉市美浜区)の土地と建物を長谷工が落札し、売買契約予定者となった。
市はこの間、機構に落札者に関する情報を再三求めたが、長谷工が落札したことを機構側から伝えられたのは2月に入ってからだったという。
長谷工は、具体的な事業内容を明らかにしていないが、JR海浜幕張駅にほど近い好立地を生かしたマンション開発を計画しているとみられる。
審議会では、文教地区へのマンション進出に規制をかけるため、同センターを含む文教地区全体(82ヘクタール)を「特別用途地区」に指定することを全会一致で決定。しかし、都市計画決定だけでは法的拘束力はなく、あくまで指導レベルにとどまり、強制力を持たせるには条例による規制が必要になる。
市は当初、今年の9月議会での条例制定を目指していたが、委員からは「もっと早く強い規制がかけられないのか」「市当局の対応が後手を踏んだのではないか」などと厳しい意見が相次いだ。市は市民の意見を聞くパブリックコメント手続きを踏まえ、6月議会での前倒し上程も視野に対応を急ぐ方針だ。
一方、機構はこれまで、市の規制方針に対し「施設の売却計画に重大な支障をきたすことから、(同センターを)区域から除外するよう再検討を願いたい」とする意見書を提出。これに対し市は、教育・学術施設の一体的な立地環境を守るため、「部分的な地区除外はできない」と伝えている。
同センターは国の行政刷新会議による事業仕分けで廃止が決まり、昨年9月末で閉館していた。
長谷工コーポレーション広報IR部の話「現時点では土地の利用計画は未定。ただ、市の方で(規制の)条例化を進めていることも認識している。市と協議の上、具体的な事業内容を検討していきたい」
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13 戸別の太陽発電を導入したマンション 2011/2/7 読売新聞
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オリックス不動産(東京都港区)は11日から、都内で初めて戸別の太陽光発電システムを導入したマンション「サンクタス武蔵野関前」(武蔵野市)=イメージ=の販売を始める。
このマンションでは、各戸ごとに区画した太陽電池を屋上に設置。発電した電力はオール電化の設備を整えた各戸で使用し、電力が余った場合は電力会社が戸別に買い取る。従来の住宅より光熱費を50%、CO2を35%削減できるという。
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14 「奇想天外な家」脚光 2011/2/4 読売新聞
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三鷹天命反転住宅の外観。カラフルな原色が特徴だ 芸術家・荒川修作さん(1936~2010)の理想を形にした東京都三鷹市の「三鷹天命反転住宅」(大沢2)に脚光が集まっている。
同住宅での暮らしを映像にまとめた山岡信貴監督(45)のドキュメンタリー映画「死なない子供、荒川修作」(80分)が昨年12月に公開され、住宅の見学会に1日で約60人が集まる。映画は5日から、武蔵野市の「吉祥寺バウスシアター」(吉祥寺本町1)でも公開される。(河村武志)
でこぼこの床、ドアのないトイレ、球形の部屋。三鷹天命反転住宅は、計14色の極彩色の内外装と奇抜な造りで、訪れた者を圧倒する。この住宅について荒川さんは生前、「体が自然にバランスをとろうとする、体中心の家」と語っていたという。
1月22日に行われた見学会には、3回で計約60人が参加。住宅の細部を観察したり、屋上から周囲の景色を眺めたりし、奇想天外な建物に感嘆の声を漏らした。相模原市から来た女子美術大学大学院2年の前池有香さん(25)は、映画を見てこの住宅に興味を持ったという。「こんな建築があるのかと驚きました。一度住んでみたい」
部屋の中は住宅とは思えない奇抜な造りになっている 荒川さんは1960年代から注目を集め、映像や哲学的論考、建築など様々なジャンルで活躍したが、昨年5月、73歳で死去した。
同住宅は地上3階で計9室。荒川さんと夫人で米国人のマドリン・ギンズさん(70)が設計し、「安井建築設計事務所」(大阪市)が国内仕様に調整した。竹中工務店(大阪市)が施工。土地代や建設費など計約5億5000万円をかけて、2005年10月に完成した。
04年から三鷹市に住み始めた山岡監督は、ほどなく近所に土管を組み合わせたような奇妙な建物が建ち始めたことに気づいた。完成後、それが荒川さんの作品であると知り、見学会に参加して入居を即断。06年11月から住人となった。
住んでみると、長年悩まされた花粉症の苦しみから解放され、体重は約7キロ減ったという。「普段使わない体の部位が自然に鍛えられる感じ。人間の体の可能性を引き出す『死なない家』なんだと感じた」
映画は、この住宅で4年過ごした山岡監督一家の暮らしや、ほかの住人たちへのインタビュー、生前の荒川さんの言葉などで構成される。山岡監督は07年、住宅を訪ねてきた荒川さんに、「住んだ感想を教えてほしい」と言われた。そこで、米ニューヨーク在住だった荒川さんに見てもらおうと撮りためた映像が、映画につながったという。
映画は好評で、昨年12月から公開している渋谷区のシアター・イメージフォーラムでは11日まで上映期間を延長。5日からは吉祥寺バウスシアターでも上映される。問い合わせは、配給元のアルゴ・ピクチャーズ(03・3584・6237)へ。
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15 「改葬」手順しっかりと 2011/2/4 読売新聞
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ご先祖さま 近くに引っ越し
高齢になって、遠く離れた郷里にある墓の維持管理が大変になり、墓の引っ越し「改葬」を考える人は多い。スムーズに引っ越すためには、必要な手順を知り、既存の墓の管理者や親戚などの理解を得ておくことが大切だ。
横浜市の会社員、田辺洋一郎さん(58)は昨年11月、先祖のお骨を新潟市にあった墓から、横浜市内に購入した新しい墓に移した。田辺さんは30年ほど前に、両親と共に新潟から横浜に移り住み、最近は墓参りに行けず、墓の手入れなども親戚に任せきりだった。「いつかと思いつつ、お墓の引っ越しの方法が分からずに何年もたってしまった」と田辺さん。80代の両親の外出が難しくなったこともあって、墓石事業者に相談し、「改葬」を決めた。
古い墓石の撤去や整地、新しい墓と永代使用料など総額約250万円かかった。「新潟まで車で5時間かかったが、今度は30分足らず。新しい墓には両親もお参りでき、ほっとしています」と田辺さんは話す。
「改葬を検討する中高年が増えています」と、墓石事業を行う「はせがわ」の永渕哲也さん。一般的な改葬の手順は別表の通り。手続き上、既存の墓がある霊園の管理者や寺の住職などの署名押印が必要になるが、「手続きを始めてから、住職や親戚に改葬を唐突に告げると、トラブルになりかねません」と指摘する。寺院にとって改葬は、長年の檀家(だんか)が離れることになるからだ。「新しい墓所を探し始めたら、改葬の意向を誠実に説明し、理解を得ておきましょう」と永渕さんは話す。
費用の問題も大きい。墓石販売の「メモリアルアートの大野屋」が約200人に行ったアンケートによると、引っ越しにかかった費用の平均額は283万円。内訳は、墓石の撤去やお布施など元の墓の整理にかかった費用が32万円。墓地取得や永代使用料など引っ越し先の費用が231万円、その他の諸費用が20万円だった。
既存の墓石の状況によって撤去費用は大きく異なる。墓石ごと移すことを希望する人もいるが、古い墓石を新しい霊園で受け入れてもらえないことも多く、移動費用もかかることなどから、お骨だけを移すケースが多いという。また、引っ越し先によっても、費用が大きく変わる。最近は、霊園ではなく納骨堂を選ぶ人もいる。
同社営業企画室の石山裕之さんは、「ローンを組むこともできますが、老後に払うには大きな金額なので、早めに検討をしましょう」と話している。
墓の引っ越しの流れ
〈1〉新しい墓を探す。墓を決めたら、新しい墓の管理者から墓所使用承諾証、または受入証明書を発行してもらう。
〈2〉既存の墓がある自治体から、改葬許可申請書を入手する。
〈3〉既存の墓地管理者から、改葬許可申請書に署名押印をしてもらう。
〈4〉自治体に、必要書類(墓所使用承諾証や改葬許可申請書など。自治体ごとに異なるため事前に確認する)を提出し、改葬許可証を交付してもらう。
〈5〉必要な宗教儀式を行い、遺骨を取り出す。既存の墓石を撤去。
〈6〉新しい墓の管理者に改葬許可証、墓所使用承諾証を提出し、納骨する。
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住宅関連新聞記事ダイジェスト No.370 2011/2/3~2011/2/9 Vol.4
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【読売新聞】
16 リンナイの給湯暖房機、22万台リコール
17 発電用パネル、落雪に注意
18 「八幡瓦」復活へ専用窯…滋賀
【日経産業新聞】
19 INAX、トイレを全面刷新 水量が業界最少、清掃しやすく
20 ニッタン、25%薄くした住宅用火災警報機 音は業界最大級
21 東洋エクステリア、デザイン自由な門扉枠
22 ノーリツ、太陽光発電システム参入 ガス給湯器と一体化
23 レオパレス、1月の入居率9カ月ぶり8割超え
24 INAX、収納機能高めた洗面化粧台
25 三井ホーム、都市部の営業強化
26 東洋エクステリア、防犯性高めた車庫用門扉
27 住生活グループ、スチール建材事業を再編
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16 リンナイの給湯暖房機、22万台リコール 2011/2/4 読売新聞
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ガス機器製造大手のリンナイ(名古屋市)は3日、同社が開発・製造し、各地のガス会社などが販売した給湯暖房機の一部に不具合があったとして、経済産業省にリコール(無償修理)を届け出た。
対象は2003年3月~09年10月までに製造した計54機種で約22万台。浴槽の湯が設定した温度より過熱し、70度まで上昇する可能性があるという。
内訳は、大阪ガスの販売分が約8万台、東京ガスが約5万4000台、東邦ガスが約3万2000台、リンナイの直販は約5万6000台など。
リンナイによると、電子基板の部品に不良品が混入したことが原因で、昨年末にかけ、「風呂に入ろうとした子供が足をやけどした」などの情報が2件寄せられたという。
同社は、2008年2月ごろから異常過熱の不具合を把握し、これまでに286件の自主修理を行っていたが、「やけどする確率は極めて低い」として、顧客に周知していなかった。
名古屋市内で記者会見した森錦司・執行役員は「判断が甘かった」と謝罪した。
リンナイは4月中旬から、対象機種の修理を始める。問い合わせは専用フリーダイヤル(0120・005・020)。
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17 発電用パネル、落雪に注意 2011/2/4 読売新聞
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国民生活センターは3日、住宅の屋根に設置された太陽エネルギー発電用のパネルが滑りやすいとして、積雪の際に落雪事故に注意するよう呼びかけた。
発表によると、パネルからの落雪で車のボンネットがへこんだり、隣家の外壁が壊れたりしたという苦情が2001年度以降、計12件寄せられている。人への被害は報告されていないが、同センターは、業界団体に対策を要望した。
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18 「八幡瓦」復活へ専用窯…滋賀 2011/2/3 読売新聞
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近江八幡・かわらミュージアム
「八幡瓦」の発祥の地、滋賀県近江八幡市の市立かわらミュージアムが今春、八幡瓦を焼く専用窯を初めて造ることになった。最盛期には市内に約30軒あった瓦業者も、住宅様式の変化で需要が減り、今ではわずか1軒が残るだけ。専用窯の新設には八幡瓦の〈伝承〉という狙いもあり、ミュージアムの担当者は「多くの人に八幡瓦の魅力を伝える拠点にしたい」と期待している。
朝鮮通信使の休憩場所などとして使われた本願寺八幡別院(近江八幡市北元町)で、屋根がふき替えられた江戸時代中期に京都から多くの瓦職人が移住し、八幡瓦が広まった、とされる。
八幡堀にたまった泥を田んぼに運び、堆積させてできた上質の粘土を使うため、原料費が安価で自然にも優しい。寒暖差に強く、いぶし銀の色合いも美しいと、近江商人屋敷や周辺の寺院などで好んで使われたが、洋風建築が広まった1970年代をピークに需要が減り、瓦業者も次々と廃業していった。
危機感を強めた市は、優れた技術と八幡瓦の伝統を守ろうと、95年にミュージアムを開館し、観光客らに魅力を紹介する体験教室などを開催。瓦業者に委託する焼成のための手間や時間など、負担を減らすため、専用窯をミュージアムの敷地内に造ることにした。総事業費は約600万円。
駐輪場を改装し、高さ1・45メートル、幅1・3メートル、奥行き1・9メートルのガス窯を置く。ガス窯は、1100度の高温で一気に焼いた後、980度まで下げて「いぶし」をかける八幡瓦用に設定。業者委託で最大2か月かかっていた焼成が、半月~1か月で可能になる。
体験教室の受講者は年約1100人で、ミュージアムは窯の新設で受講者を数倍に増やしたい、とする。3月中に完成させ、5月の稼働を目指しており、奥村恭代副主幹は「今後、ものづくり工房としての活用も検討していきたい」と話している。
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19 INAX、トイレを全面刷新 水量が業界最少、清掃しやすく 2011/2/9 日経産業新聞
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INAXは8日、家庭用トイレを全面刷新すると発表した。使用水量が4リットルと業界で最も少ない節水トイレや、清掃をしやすくした製品を投入、シェア上昇を狙う。女性の感性を商品開発に取り入れた点を売り込む。トイレの売上高を2013年度に10年度比2割増まで高める目標だ。
4月1日に4製品を発売する。高価格帯の製品である「サティス」とタンク付トイレの「アメージュZ」は一度の洗浄に必要な水量を、従来より約2割少ない4リットルに抑えた。内部に水を圧縮して勢いよく排出する仕組みを搭載、少ない水で汚物を効率的に流す。
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20 ニッタン、25%薄くした住宅用火災警報機 音は業界最大級 2011/2/9 日経産業新聞
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住生活グループ傘下のニッタンは薄型の住宅用火災警報機「けむタンちゃんスリム」と「ねつタンちゃんスリム」を4月1日に発売する。専用の電池を採用し、従来機種に比べ25%程度薄くして目立ちにくくしたほか、業界最大級という92デシベルの警報音を備える。インテリアにこだわる層に向けて売り込む。
けむタンとねつタンはそれぞれ煙と熱を感知して住民に警告する。天井や壁に張り付けて使う。厚みは、けむタンが3センチメートル、ねつタンが3.3センチメートルで従来機種の4分の3程度に薄くした。表面の光沢を抑えた仕上げとし、平常時には目立ちにくい。
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21 東洋エクステリア、デザイン自由な門扉枠 2011/2/9 日経産業新聞
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東洋エクステリアは門扉用部品の新製品を発売する。パネルや枠を自分で組み合わせられる「デザイナーズパーツ」シリーズに対応しており、好みに合わせてデザインを変更できる。年間5000万円程度の売上高を目指す。
「縦張り用」と「横張り用」の門扉枠2種類を3月1日に発売する。それぞれ木材の板やパネルなどを好みに合わせて取り付けられる。現場で施工する際、幅を現場で切り詰めてサイズを調節できる。これまで門扉を取り付けていなかった戸建て住宅向けに販売する。
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22 ノーリツ、太陽光発電システム参入 ガス給湯器と一体化 2011/2/8 日経産業新聞
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【神戸】給湯器メーカーのノーリツは7日、太陽光発電システムの生産に参入すると発表した。給湯器と一体としたシステムの販売により、一般家庭向け需要の開拓に取り組む。4月に発売し、初年度は施工数で3000件、売上高で60億円を目指す。
多結晶タイプの太陽電池モジュールを3月29日から加古川工場(兵庫県加古川市)で生産する。標準モジュール寸法は高さ1336ミリメートル、幅1008ミリメートル、厚さ46ミリメートル。出力は190ワットで、太陽光を電力とする変換効率は14.1%。
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23 レオパレス、1月の入居率9カ月ぶり8割超え 2011/2/7 日経産業新聞
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レオパレス21は同社運営物件の1月の入居率が9カ月ぶりに8割を超えたと発表した。法人需要の開拓に加え、製造業の稼働率が上昇、同社が得意とする単身者向けアパートの需要が回復していることが背景にある。
1月の入居率は80.9%で前月比1.2ポイントの上昇。8割を超えたのは2010年4月以来9カ月ぶり。前年同月比では1.4ポイントのマイナスだが、前月比では3カ月連続のプラスとなった。法人の社宅需要の伸びに加え、中部地方などを中心に製造業で雇用が増えつつあることが寄与した。
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24 INAX、収納機能高めた洗面化粧台 2011/2/7 日経産業新聞
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INAXは洗面化粧台「Piara(ピアラ)」を改良し、4月1日に発売する。洗面ボウルのデザインを刷新して使い勝手を高めたほか、収納機能も強化。施工時に高さ調節が可能な鏡を選べるようにするなどリフォームにも対応する。
ボウルの間口を拡大して、広く使えるようにした。底が平らなので洗面器やバケツを置ける。右脇には眼鏡や化粧品などを一時的に置ける棚を設置。左には水切り用の棚を配置し、コップや泡立てネットなどぬれるものを置いて乾かせる。排水口内部にしかけを施し、髪やゴミがまとめて集めるため、水はけが良い。水栓は水量を20%程度削減できる節水タイプで、水はねも少ない。価格は11万5500円からで、工事費が別途かかる。月間6千台の販売を見込む。
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25 三井ホーム、都市部の営業強化 2011/2/4 日経産業新聞
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三井ホームは3日、都市部の営業戦略を強化すると発表した。4月1日付で全国の中堅地方都市に設けている営業所やモデルルームを閉鎖し、現地の営業人員を近接の大都市や三大都市圏に集約する。売り上げの大半を占める都市部の需要を開拓する狙い。併せて資材供給の子会社3社を統合し、資材調達の効率化やコスト削減につなげる。
営業所を閉鎖するのは盛岡、山形、山梨、奈良、和歌山、長崎などの9カ所。現在は100人強の営業人員を配置しているが、広島など近接の大都市や、東京、名古屋、大阪の三大都市圏に再配置する予定。営業所を閉鎖した地域は近接都市の営業人員がカバーする。詳細は3月に決める。
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26 東洋エクステリア、防犯性高めた車庫用門扉 2011/2/4 日経産業新聞
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東洋エクステリアは3日、防犯性能を向上させた車庫用門扉「オーバードアS」を3月1日に発売すると発表した。盗難やいたずらから自動車を守れる点を売り込む。デザイン性も高めた。戸建て住宅に向けて販売し、年間15億円の売上高を見込む。
防犯性を意識して、新たに高さ131センチメートルのパネルを追加した。これまでの120センチメートルに比べ乗り越えにくくい。デザインも全8種類から選べるようにするなど、自由度を高めた。色は最大11色から選べる。
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27 住生活グループ、スチール建材事業を再編 2011/2/3 日経産業新聞
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住生活グループは2日、スチール建材事業を再編すると発表した。シャッターを手掛けるトステム鈴木シャッター(東京・豊島)を存続会社とし、鉄製ドア製造のグループ会社などを統合する。事業規模を拡大するとともに固定費や変動費の低減を狙う。
4月1日付で統合会社「LIXIL鈴木シャッター」を設立する。トステム鈴木シャッターを存続会社とし、鉄製ドア製造のトステムSD(東京・豊島)と合併、集合住宅向けドア製造・販売のコスモ工業(岩手県一関市)の営業部門も統合する。